
まわりはそうでもないのに、自分だけ脇汗が多いと「私って病気なの?」と不安になりますよね。
実は、異常な量の汗をかく場合は「多汗症」という病気の可能性があります。
ここでは病院で診断される多汗症についてまとめました。あくまで判定は医師がするものですが、参考までにチェック方法も載せてありますのでぜひご覧ください。
脇汗が異常に多い場合は「多汗症」という病気の可能性が

多汗症というのは文字通り「汗の量が異常に多い状態」のことで、実は皮膚科に関係するれっきとした病気です。
公益社団法人・日本皮膚科学会では、次のような説明がされています。
多汗症とはどんな病気ですか?
多汗症には、全身に汗が増加する「全身性多汗症」と、体の一部に汗が増える「局所多汗症」があります。
全身性多汗症には特に原因のない原発性と、感染症や内分泌代謝異常、神経疾患に合併するものがあります。
局所多汗症も原因のわからない原発性と外傷や腫瘍などの神経障害による局所性多汗症があります。原発性局所多汗症では手のひら、足のうらや脇という限局した部位から両側に過剰な発汗を認める疾患です。
引用元: 日本皮膚科学会「汗の病気」
ちょっと難しいので、もう少しかみ砕いて見てみましょう。
まず、多汗症は全身の汗が多い「全身性多汗症」と、体の一部だけ発汗が多い「局所性多汗症」に分けられます。
さらにこの2つは、「続発性か?」「原発性か?」で分けられ、最終的に4つの多汗症タイプとして区別されます。

続発性の多汗症というのは、糖尿病や結核、甲状腺機能亢進症(バセドー病)など何らかの病気が引き起こす多汗症のこと。
続発性は「二次性」という意味があるので、病気が引き金となって二次的に引き起こされる多汗症ということですね。
対して原発性の多汗症というのは、なんだかよくわからないけどとにかく大量の汗が出る多汗症のこと。
原発性とは「原因不明の」という意味であり、心当たりのある病歴がないのに汗がたくさん出てしまう多汗症というわけです。
繰り返しますが原発性タイプの多汗症は原因不明なので、はっきりとしたメカニズムは解明されていません。
今のところは、交感神経が人よりも興奮しやすいとか家族歴がみられるといった報告があるくらいです。
割合としてはこの原発性タイプがほとんどだと言われていて、さらに体の部位によって次のように名前が決められています。
原発性局所多汗症の種類
- 手掌多汗症(しゅしょう たかんしょう)…手のひらのいわゆる手汗
- 足底多汗症(そくてい たかんしょう)…足の裏のいわゆる足汗
- 腋窩多汗症(えきか たかんしょう)…ワキの下のいわゆる脇汗
- 頭部顔面多汗症…頭や額などのいわゆる顔汗
※手汗と足汗を合わせて掌蹠多汗症(しょうせき たかんしょう)と呼ぶこともあります
もしあなたが、特別な病気の心当たりがないのに脇汗を異常にかくのなら、腋窩多汗症に該当する可能性があります。
ワキガと腋窩多汗症は違う

これはよく勘違いされるのですが、ワキガと多汗症は違います。
ワキガは正式名を腋臭症(えきしゅうしょう)と呼び、原因となる汗腺はアポクリン腺です。汗の量というよりはニオイに悩まされる病気ですね。
対して多汗症はエクリン腺に関係する疾患で、ワキガのような臭いはしません。ですから、脇汗が多いからといって必ずしもワキガではないのです。
ただし、人によってはワキガと腋窩多汗症を併発しているケースはあります。
【参考】ワキガとは何か?原因やにおうメカニズムをおさらい【基本が大事】
一応自分でもできます!多汗症の診断チェック

多汗症かどうかを厳密に判断するのはあくまでも医師であり、私たちが勝手に判断することはできません。
問診や発汗量の測定などをとおして重症度を判定、その結果をもとに医師が決めるわけです。
具体的な診断基準は以下のとおりです。
原発性局所多汗症の診断
明らかな原因がないまま、局所的に過剰な発汗が6カ月以上認められ、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合を多汗症と診断している。
- 最初に症状がでるのが25歳以下であること
- 対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- それらによって日常生活に支障をきたすこと
これらを問診で聞かれ、次に医師がワキやワキ汗の状態を目で確認する視診が行なわれます。場合によっては発汗量の測定を行ない、最終的に重症度が判定されるとのこと。
「とのこと」と書いたのは、私が汗で病院に行ったことがないからです。だから自分が多汗症かどうかはわかりません。
しかし脇汗で悩んでいることは事実ですので、自分勝手にですが上のチェックをやってみました。
1.最初に症状がでるのが25歳以下であること
→中学生のころからです
2.対称性に発汗がみられること
→両脇ともたくさん出ます(やや右のほうが多い)
3.睡眠中は発汗が止まっていること
→朝起きて脇が湿っていないのでたぶん止まっています
4.1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
→仕事での車の運転中に脇汗、お客さまと接すると脇汗。1週間に4~5回くらい
5.家族歴がみられること
→兄のTシャツの脇部分が黄ばんでいるのは見たことがあります
6.それらによって日常生活に支障をきたすこと
→男ですが汗染みは恥ずかしいし、ニオイも気になります。緊張すると出てしまう脇汗は季節が関係ないので、冬でも制汗剤を買わなければなりません。
多汗症は精神的苦痛を伴う病気

多汗症が他の病気やケガと大きく違うのは、精神的苦痛が主な症状という点です。
- 服に汗染みができてしまい恥ずかしい
- 自分がにおっているのではないか、まわりにバレないか不安
- 人間関係に影響するし好きなこともできない
このように他人との社会的なかかわりを通して恥ずかしいといった精神的苦痛がうまれ、QOL(Quality of Life:生活の質、人生の質)が下がってしまうわけです。
体が痛くて動かせないとか臓器がおびやかされるとか、そうした肉体的なダメージではなく、精神的にじわじわ攻められる病気ともいえますね。
私はこの「精神的」というのがとても重要なポイントであると考えています。
汗っかきと多汗症の違い~脇汗が多いと必ず多汗症なのか?
多汗症に似た言葉で「汗っかき」というものがありますよね?この汗っかきと多汗症の違い、これこそが「精神的」という部分に大きく関係するといえます。
つまり、たとえ汗が多くても本人が悩んでいなければそれは多汗症ではない。これが汗っかきと多汗症をわける要素ではないかと。
汗っかきと多汗症の違い
- 汗っかき…汗をたくさんかくけど特に気にならないし不自由に感じていない
- 多汗症…日常生活に支障をきたすほど精神的に困っている
たとえば、営業職のAさんと建設作業員のBさんがいるとします。この2人は同じくらいの脇汗をかくものと考えてください。
営業職のAさんは、スーツやシャツに汗染みができてしまいとても悩んでいます。
お客さまのところに行くからニオイも気になるし、スーツは簡単に洗えないし、なにより見た目が恥ずかしい。
緊張するプレゼンでは毎回ぐっしょりと汗をかいてしまい、本当に何とかしたいと困り果てています。

かたや建設作業員のBさんは、高いところで作業するとたしかに緊張から脇汗をかいてしまいますが、そもそも屋外での仕事なので汗をかくのは当たり前と言えば当たり前です。
それにまわりの社員もBさんと同じように汗だくだし、男ばかりだからみんな多少は汗臭いです。
また、汗染みができても作業服だからガンガン洗濯できるので、日常生活で困ることは特にありません。

この2人の決定的な違い、それは「本人が精神的に悩んでいるかどうか?」です。Aさんは多汗症と診断される可能性が高いですが、Bさんはただの汗かきといえるでしょう。
そもそもBさんは悩んでいないので病院へ行こうとは考えないだろうし、ネットであれこれ調べようとも思わないはずです。
つまり何が言いたいかというと、多汗症かどうかは個人差が大きく、置かれている状況にもよるということです。
- 性別による違い
- 性格による違い
- 職業による違い
- 生活環境や状況による違い
たとえば、男性は顔汗がひどくてもハンカチで拭けますが、女性は化粧崩れが気になるためゴシゴシは拭けず困りますよね。
たとえば、男でタフな性格の人なら脇汗が出ても「ナンボのもんじゃい!」で済ませてしまうかもしれません。
たとえば、配送の仕事をしていていつでも常に一人、他の社員とは関わることがない人なら、脇汗が出て困るケースは少ないといえます。
このあたりが多汗症の難しいところではないかなぁと私は思っていますし、精神的な要因が強いからこそデリケートな問題であると思っています。
いずれにせよ、診断するのは医師であり、場合によっては大きな病気が隠れている「続発性」の可能性もあります。
不安な場合は病院へ行き、診断のさいはあなたが感じているありのままを医師に伝えてください。