
ボトックス注射というと、美容皮膚科でのシワやたるみ解消といったアンチエイジングで有名ですが、実は多汗症の治療でも使われています。
メスを使ったりしないためお手軽にできる治療ではあるのですが、脇汗に悩む状況にてらし合わせてみると、意外な落とし穴が。
ここでは、ボトックス注射についてくわしく解説してみました。
塩化アルミニウムで効果がなかった人にはボトックス注射

原発性局所多汗症診療ガイドラインにおける脇汗の診療では、第2選択の治療法としてすすめられるボトックス注射。
塩化アルミニウムの外用薬で効果がなかった、あるいは、皮膚が弱いため塩化アルミニウムだと刺激が強すぎて使えない人は、このボトックス注射で治療することになります。
そもそもボトックス®というのは実は製剤名で、本来は「ボツリヌス毒素の局注療法」が正式な治療名です。局注とは局部注射の略ですね。
ボトックス注射が脇汗を抑えるメカニズム

私たちが汗をかくとき、交感神経からは「アセチルコリン」という神経伝達物質が出されます。
このアセチルコリンが汗を出す信号であり、汗腺に伝わることで私たちは汗をかくわけです。
ボトックス注射は、汗を出す信号のアセチルコリンをブロックすることで脇汗を抑えようとするもの。
ボツリヌス毒素に含まれる「ボツリヌストキシン」というタンパク質には、神経の伝達を抑制する働きがあるため、これをワキの下に注射することで脇汗を抑えることができるのです。

毒素と聞くと「体内に入れて大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、ボツリヌス毒素そのものを注射するわけではありません。
あくまでボツリヌストキシンというタンパク質の局部注射なので、体が毒されるようなことはないです。
片脇で約15~20箇所に注入し、汗を抑える効果は4~9ヵ月ほど続きます。施術時間は5~10分ほどで終わるので、病院治療としてはお手軽な部類といえますね。
ボトックス注射ができない人
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、筋力低下を起こす病気をお持ちの方
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性や授乳中の女性
- 過去にボトックス注射をしてアレルギーを起こしたことがある人
よくよく考えるとボトックス注射にはデメリットが…

「へぇ~、注射するだけで数ヵ月はワキ汗が止まるんだ。ボトックスっていいじゃん♪」
そう思うかもしれませんが、もっと深掘りしてよくよく考えてみると、手放しでおすすめできない面も。
まず、4~9ヵ月という汗を抑える期間ですが、私のように重度の脇汗男は一年中ワキ汗に困っているわけです。
夏だけ多くて困るとか、そんな ”なまやさしい” レベルではありません。
特に私などは冬の脇汗がとても多くて、緊張するとダラダラ出るし、臭いも気になるし…。
ですからもし4ヵ月で効果が切れちゃったとしたら、年に3回は打つ必要があるわけです。
実際、あっという間に効果が切れて期待ハズレだったという声もあるので、人によって合う/合わないがありそうです。
そして、「あ、そろそろ切れたかも(汗)」という時に、病院へ連絡して予約をして…というのが面倒だし、すぐに予約が取れるとも限りませんよね?
そんなとき、待っている間の脇汗はどうすればいいんでしょうか・・・。

またお手軽な治療方法とはいえ、費用の面ではけっしてお手軽とは言い切れないことも。
ボトックス注射の費用は、保険適用の3割負担で約3万円前後。これに実施料(注射手技料)が別途かかるところもあります。
仮に、年一回の注射を20年続けたとしたら60万円ですね(汗)
しかも保険適用となるかどうかは医師の判断であり、いくら自分が脇汗で悩んでいても、重度の腋窩多汗症(えきかたかんしょう)と診断されなければ実費となってしまいます。
あと、これは個人的な思いですが、チキンな私にとって15~20箇所に注射する(←片脇だけで!)のは正直こわいんです。デリケートなワキの下ですから、なんだか痛そうじゃないですか。
一瞬チクッとするくらいで許容範囲だとは言われていますが、体験した方の感想では「涙が出るほど痛くて、看護師さんに手を握ってもらい励まされながら注射した」なんて声も(汗)
これを毎年、3万円前後のお金を払って行なうというのは、精神的なハードルが高いんですよね。。。
そんな私はボトックスではなく、塩化アルミニウム液に頼りっぱなしです。
わざわざ病院に行く必要がないですし、ワキ汗が重度の私でも塩化アルミニウムで十分だからです。
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